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桧家住宅「Z空調」の電気代は安い? 自宅の電気代と比較してみた

Z空調
桧家住宅 Z空調

Z空調の電気代は夏3,348円、冬9,319円は本当?

2020年6月1日、ヒノキヤグループからZ空調を導入された家庭の電気代の調査レポートが公表されました。
ヒノキヤグループの社長ブログで紹介されており、これから導入を考えている方は本当にそうなのか、それとも何らかの有利な条件で測定した結果なのか気になると思います。
今回、電気代が妥当なのかどうか調べてみようと思います。

ヒノキヤグループが出したレポート

レポートのPDF形式ですが、こちらにあります。
『Z空調』搭載宅の消費電力調査結果発表―『Z空調』だけの月平均の電気代は夏3,348円、冬9,319円―

これを受けて、Z空調の公式サイトでも電気代が紹介されています。 www.hinokiya.jp

これは実際どうなのでしょうか?

そもそもZ空調とは?

Z空調とは、いわゆる全館空調です。
一般的な住宅であれば各部屋に1台ずつエアコンを設置していることが多いと思いますが、Z空調は1階と2階に1機ずつ計2台で住宅全体を冷暖房するというシステムです。

一般的な全館空調と異なるのは、

  • 全熱交換器の24時間換気(協立エアテック社のもので熱交換効率70%前後)
  • エアコン(ダイキン社のもの)

を直結しており、無駄が少なく、温度のムラも少ないと言われているものです。

欠点としては湿度が外気に強く依存するところで、特に冬場は乾燥します。加湿器は必須です。

全館空調としては費用も安く、100万円強で導入できます。 他社含めて全館空調については以下のサイトが詳しいです。
【全館空調ハウスメーカー比較】最強の1台が見つかる! | 注文住宅ヘルプナビ

なぜ自宅の電気代と比較するのか?

実は自宅は桧家住宅で建てていました。
Z空調もキャンペーンで無料導入しておりますが、だいぶ条件は異なるものの比較してみようと思います。

なお前回の記事で断熱性に懸念がありギリギリ及第点みたいなことを書いたので伏せていました。
ahera.hatenablog.jp

ただ昨冬(2019~2020年)は暖冬ということもあり、寒さはそんなに気にはなりませんでした。
また今思うと自分はそれまで集合住宅にしか住んだことが無く、初の戸建でそう感じたのだと自分自身を納得させています。
今回の検証では、この自分自身への説得材料として客観的なデータで補強したいという意図もあります。

電気代の条件の違い

公式レポートでは以下のようになっています。

公式レポートの条件

■調査対象:『Z空調』搭載住宅居住の31世帯
・単世帯・オール電化・延べ床面積約30~40坪・2階建
■居住地域:4~6地域
■調査期間:2019年1月~12月
■調査方法:対象宅のHEMSにデータ記録用のSD カードを設置し、回路ごとに2019年1年間(1時間単位)の消費電力量を記録。
実測したデータを元に各宅の契約電気料金プランに合わせた単価を掛け合わせ、回路ごとの電気代を算出。

居住地域ですが、気候によって1~8に分かれており、求められる住宅性能が変わります。
1地域は北海道、8地域は沖縄といった具合です。

  • 4地域…南東北や栃木など。
  • 5地域…北関東、南関東の山沿い。東京の多摩のほう。自宅がある場所です。
  • 6地域…5地域以外の関東。ほか関西はほとんどこの地域です。

電力プランは次のいずれかです。

※おそらく10kVA契約(100A相当)と思います。

また、換気システム『ココチE』とエアコン2台を24時間稼働実績があった住居が対象です。

自宅の条件

  • 単世帯(大人2名、子ども1名)
    子どもはまだ小さく、自分の部屋はありません。普段は1階で過ごし、寝るときは2階で寝ています。
  • 電気ガス併用 (オール電化ではありません)
  • 延床面積 約31坪
  • 2階建て
  • 5地域 (東京・多摩地区)
  • 電力プラン: looopでんき ビジネスプラン

ガスは給湯とコンロのみで、冷暖房はZ空調です。 一応コロナ社のシーズヒーターも持っていますが、部屋ではなく人体を暖めるもので長時間は使いません。昨冬は延べ20時間も使っていないと思います。

ソーラーパネルなどはないため、looopでんきは特に単価の割引はありません。
2020年6月現在、27.5円(税込) / kWh です。

エアコンは基本的に24時間稼働はしていませんが、2019年7~8月は24時間稼働していました。設定温度は1階が26℃、2階は28~29℃です。
5~6月や9~10月は不快なときだけ稼働しています。
また、11~4月の平日は朝晩のみ暖房で、休日は24時間稼働です。

レポートの検証

公式レポートのZ空調のみの消費電力量平均と電気代平均

Z空調のみです。
それ以外の住宅で使用している照明、家電、調理や給湯などは含まれません。

1月 2月 3月 4月 5月 6月
消費電力量(kW) 489.2 381.5 275.7 160.2 52.8 56.2
電気代(円) 11097 8666 6274 3644 1261 1390
7月 8月 9月 10月 11月 12月
消費電力量(kW) 109.9 188.1 97.5 76.0 181.7 361.7
電気代(円) 2798 4781 2464 1822 4255 8195

なおレポートには年間の消費電力量は2430.4 kWhで、電気代は56647円とあります。 単価は23.3円/1kWhですね。

自宅の全体の消費電力量と電気代

まずZ空調含む、すべての電気量と電気代(電力量料金)です。
請求月の前月を使用月としています。
実際には燃料調整費や再エネ割賦金などもあるので、請求される電気代としてはこれに+6.4%程度かかります。

1月 2月 3月 4月 5月 6月
消費電力量(kW) 704 530 452 334 267 272
電気代(円) 19008 14310 12204 9018 7209 7344
7月 8月 9月 10月* 11月* 12月*
消費電力量(kW) 363 455 313 314 424 653
電気代(円) 9801 12285 8451 8635 11660 17958

*27.5円/1kWh、それ以外は27円/1kWh

ここでかなりざっくりな計算になるのですが、エアコンをほぼ使用しなかった2020年5~6月の値からエアコン以外の電力使用量を260kWh、電気代7020円(1kWh 27円)と仮定します
2018年や先月2020年5月の電気代も大体この値段なので概ね妥当だと思います。

自宅のZ空調のみの消費電力量と電気代(推定)

エアコン以外の電力使用量を260kWh(電気代7020円、2019年10月からは7150円)を引いたものが、およそZ空調で使用した値になるはずです。

1月 2月 3月 4月 5月 6月
消費電力量(kW) 444 270 192 74 7 12
電気代(円) 11988 7290 5184 1998 189 324
7月 8月 9月 10月* 11月* 12月*
消費電力量(kW) 103 195 53 54 164 393
電気代(円) 2781 5265 1431 1485 4510 10807.5

*27.5円/1kWh、それ以外は27円/1kWh

自宅のZ空調の年間の消費電力量は1961 kWh、電気代は53252.5円です。

Z空調の消費電力量を比べてみた

グラフにするとこんな感じです。

Z空調公式調査の平均消費電力量と自宅の比較 @ahera

使い方は前述の条件のところに記しましたが、Z空調公式レポートは24時間稼働に対し、自宅は7~8月のみ24時間稼働です。
しかしながら大きな差はなさそうですね。
その点ではレポートの結果は有利な条件や脚色は無く、正しそうと思います。

年間消費電力量はレポートが2430.4 kWhに対し、自宅は1961 kWhと19%程度平均より少ないです。
24時間稼働のほうが消費電力量が低いとは言われていますが、自分の場合共働きのため平日は不在なので、その場合は都度切ったほうが少し節約になるのかもしれません。

Z空調の電気代を比べてみた

一方電気代を比較すると、単価の高い自宅との差は縮まります。

Z空調公式調査の平均電気代と自宅の比較 @ahera

年間電気代はレポートが56647円に対し、自宅は53252.5円で6%程度平均より安いです。
単価が違うため、グラフとしては差が出てきています。

住宅全体の電気代や光熱費はどうなの?

さて、Z空調のレポートは正しそうということがわかりましたので、この先は自分が桧家住宅の住宅性能に疑問をもっていた部分を払拭できるか検証するためのオマケです。
住宅全体の電気代はどうなのか比較してみます。

住宅全体の電気代は?

レポートには家全体にかかるすべての電力量は 7409 kWh とあります。 オール電化の戸建です。 ここに単価23.3円を掛けると使用電気量については 172630円 となります。 ただ時間帯によって単価が異なるため推定にはなります。 なおここには基本料金や燃料調整費、再エネ割賦金は含まれていません。

自宅は 5081 kWh です。 31%も少ないですが、電気+ガス併用の戸建なので給湯や調理には電気はほとんど使っていません。 ただ電子レンジや電気圧力鍋ヘルシオ ホットクック)は多用しています。 単価は27円もしくは27.5円(10~12月)で、137883円となります。 これに燃料調整費、再エネ割賦金などを含めて146720円が年間の請求額となります。 月平均では12227円です。

ではレポートのモデルケースでは基本料金や燃料調整費、再エネ割賦金を含めるとどの程度の電気代になるのでしょうか?

レポートの電力プランは関東であれば東京電力:スマートライフプランになると思います。 東京電力のサイトを見ると基本料金 (1kWにつき) 458.33円とあります。

桧家住宅では工事担当から10kWでの契約を進められました。 これが標準だと思いますので、基本料金は4583.3円になると思います。

再エネ割賦金(再生可能エネルギー発電促進割賦金)は2.95円で、東京電力もlooopでんきも同じでした。 燃料費調整ですが、こちらは調べ切れてはいませんが、2019年10月は-1.80円で、東京電力もlooopでんきも同じでした。 したがって、使用電気量の電気代に6.4%を足し、そこに基本料金を加えれば、およそ東京電力から請求される金額になると思います。

172630 × 1.064 + ( 4583.3 × 12 ) = 238678

238678円でした。
月平均では19890円です。基本料金が高い分だいぶ電気代は高い印象です。
ちなみにlooopでんきにすると213831円になるようです。

オール電化のご家庭の方、いかがでしょうか?

住宅全体の光熱費は?

自宅は電気+ガスなのでオール電化と電気代と単純な比較はできません。
そこで自宅のガス代も加えてみます。

自宅のガス代は2019年は46258円でした。
電気代146720円を足すと光熱費全体で192978円です。
月平均では16082円で、それでもレポートより安いです。

光熱費として比べた場合のグラフはこのようになります。 レポートの電気代の推定値は、各月のZ空調の電気代に (7409÷2430.4) と 1.064 を掛け、基本料金4583.3円を足した値です。

Z空調公式調査の平均全体電気代(推定)と 自宅の光熱費(電気+ガス)の比較 @ahera

折れ線グラフ2つを足すと、自宅の光熱費の棒グラフになります。

まとめ:Z空調自体のレポートは正しい

いかがでしょうか。
Z空調の消費電力量に着目した場合、グラフの傾向はほぼ同じとなっており、利用形態に差はあるもののZ空調が特に有利な条件で測定しているということはなく正しそうです。

一方で住宅全体の電気代を見るとかなり異なります。
光熱費全体で見ると電気+ガスの自宅のほうが年間で46000円ほど安いです。
今回はZ空調としてのレポートの検証をしたので、住宅全体の光熱費の違いについてはここで優劣をつけるつもりはありません。
ただ注文住宅を作る際に設備の差がどういった違いが出るのか1つの例として参考になれば幸いです。

ちなみにオール電化は電気代が高いですが、以下の方法で安くすることができます。

  • 電力会社を変える (自分の場合はlooopでんき)
  • 太陽光発電をつける

太陽光発電は初期費用が高く、買取単価も下がってきています。
何十年と住んだ場合にどの程度違ってくるのかよくシミュレーションしてみるとよいでしょう。

自分としては

前回の記事で住宅性能にやや不満を漏らしたところがありましたが、今回のZ空調のレポートを検証してみて平均よりも安かったので「そんなもんだ」と自分を納得させることができました

ただ冬は部屋の隅が寒かったりするので、サッシは樹脂アルミ複合のものではなく、オール樹脂やトリプルガラスを使ったほうがZ空調のような24時間前提の全館空調はより効果が高まるのではないかと思います。 (なお、オール樹脂のペアガラスは現在標準のようです)

特に自分のような寒がりではオーバースペックくらいがちょうどいいので、何十年後にリフォームするときにはこのあたりを変えてみようかと思います。
桧家住宅にはぜひトリプルガラスもオプション導入できるようにしてもらえたらなぁと勝手に要望します。